今回も教養の一環として落語を一席
穴どろ
ある男Aのお話
明日までにどうしても30万円が必要で、
朝から金策に走り回っていたが、どうにもならない。
日が暮れて、しょうがなく家に帰ると、
奥さんにお金が作れなかったことをけなされた。
頭にきたAは、家を飛び出すのだが、行くあてはない。
トボトボと夜道を歩いていると、
ある会社の前で立ち止まった。
会社の二階から、その会社の従業員らしき男が、
床の塀をつたって、下まで降りてくる様子が見えた。
どうして、そうやって出てきたのか、理由はわからないが、
今のを逆に行けば、会社に侵入できるなと、考えた。
Aは、30万円欲しさに、
この会社に盗みに入ろうと決めた。
Aは、先ほどの男が降りてきたところを思い出し、
塀をよじ登り、難なく、会社に侵入した。
中を覗いてみると、何やら、話し声が聞こえてくる。
様子を伺ってみると、どうやら会社のお祝いを1階でやっているようであった。
なるほど、
先ほどの男は、祝いの席から退出するのが忍びなかったので、
こっそり2階から帰ったのだな。
Aは、2階を物色したが、金品はどこにも見当たらなかった。
ということは、
「金目のものは1階かぁ。しばらく待つしかないなぁ」
そのうち、
「もう、そろそろお開きにしましょう。」
との、声が聞こえてきた。
程なくして、人の気配がしなくなった。
Aは、恐る恐る1階に降りて行った。
金品を探そうとしたところ、
先ほどのお祝いの席であろう場所に、
料理やお酒などが残っていた。
Aは、
「そういえば、朝から何も食べてなかったなぁ」
と、我慢できなくなり、料理やお酒を飲み食いし出した。
しばらく、Aが夢中で食べていると、
隣の部屋から物音が!!!
びっくりしたAは、隠れようとしたが、
酔いが回って足がもつれてしまった。
フラフラと歩いているうちに、
ドン!ゴロゴロ!
Aは、たまたま空いていた半地下への階段に引っかかり、
半地下の部屋に落ちて行ってしまった。
この音に驚いた会社の従業員たちが集まり、
泥棒だ!
と大騒ぎ!
しかし、怖くて誰も半地下の方へは近づくことができない。
痺れを切らした、社長が、
「誰か、様子を見るというものはいないのか!」
と言った。
(いやいや、警察を呼ぼうよ、と今なら思いますが、落語の世界なので、
ご容赦ください。)
「社長、オレが行きます!」
と、昔ケンカでならしたと噂のBが名乗り出た!
「よし、任せたぞ!」
と、社長。
Bは、半地下の方に近づき、
「おい、泥棒。出てくるなら今だぞ!」
と、怒鳴った。
Aは、驚いたが、ここまで来れば、ヤケだ!と、
「来れるものなら、来てみろ!ただじゃおかないぞ!」
と言い返した。
これに驚いたB
「いやいや、反撃してくるなんて聞いてないぞ」
と、その場から動けなくなった。
しばらくして、業を煮やした社長が、Bに対し、
「泥棒を捕まえたら、10万円のボーナスをやるぞ!」
と言った。
しかし、Bは動かない。
「じゃあ、20万円でどうだ!」
と社長。
「わかりました。」
と、B。
しかし、さらにわめくAの声を聞いて、動けないB。
Bは、
「すいません。社長、やはり私にはできません。」
と、階段から離れようとした。
慌てた社長は、
「待て!30万円やるから、
考え直せ!」と。
これを聞いたAは、
「それなら
こっちから上がっていくよ!」