今回も教養の一環として落語を一席
錦の袈裟(にしきのけさ)
大学のダンスサークルAの友達が、
高価なラメ入りの生地を使った服でクラブに行き、
「モテまくって、まいったよ」との噂を聞きつけた、
非公認のダンスサークルBのメンバーたちがガヤガヤ。
普段から何かにつけて、張り合っている両サークル。
Bのメンバーたちは、
「高価なラメ入りの服なんて足元にもおよばないようなヤツでいこう」
と、考えているうちに、
メンバーの1人が、
「錦の生地で衣装を作ろう」
と言い出した。
「錦って、なんだよ?」
と他のメンバー。
「お坊さんが着ている袈裟みたいな、
すごい豪華な刺繍が入っているヤツだよ。」
「ああ、アレで、衣装を作るのか。豪華だし、なんか新しいな。」
と、みんな大賛成。
Aに勝つためには、少しぐらいの出費は覚悟しようと、
みんなお金を出し合って、錦の衣装を揃えたのであった。
そんな中、
いつもボーッとしているCは、
そんなことになっていることに気づかず、ボーッとみんなの輪の中にいた。
他のメンバーが
「おい、C、おまえは、衣装が用意できたのか?」
と尋ねると、
「衣装ってなんのこと?」
と、案の定何も用意していなかった。
今までの流れをざっくり教えてもらい、
「今度の土曜日にクラブに行くから、
それまでに用意しとけ。」
と怒られた。
さて困ったC。
「バイト代もまだ出ないし、お金もないんだようなぁ。
そもそも、錦ってなんだよ。」
とぶつぶつ。
「たしか、
お坊さんが着ている袈裟みたなやつとか言ってたなぁ」
「そうだ、
近所のお寺の住職が法事の時にすごい豪華な袈裟を着ていたなぁ」
と、思いだし、
早速近所のお寺に行くことにした。
お寺に着くと、
Cはすぐに住職を見つけることができた。
「すいません。住職。
この前の法事で着ていた袈裟を
貸していただけないでしょうか。」
これを聞いて
「いいよ。」
と言うわけがない。
住職は、何でかしてほしいのか、と尋ねると。
「知り合いで、何かに取り憑かれたと言っている人がいる。
袈裟を着て、念じれば、取り除けるかもしれない。」
と苦し紛れに、答えた。
住職は、そんなことはないだろうと思いながらも、
どこか抜けてはいるが、根は真面目なCが必死に頼むので、
少しの間だけ貸すことにした。
「いいか、C。今度の日曜日に大事な法要が入っているから、
日曜日の朝までには、必ずお寺に返しに来なさい。」
喜んだCは、
「ありがとうございます。
日曜日の朝までには必ず返しに来ます。」
とお礼を言い、早速準備に取りかかった。
さて、約束の土曜日、
クラブに着くと、Bのメンバーたちは、錦の衣装に着替え始めた。
そこで、Bのメンバーは驚いた。
Cの衣装が、一際豪華な錦であり、その刺繍も素晴らしかったからである。
「おい、C。その衣装どうしたんだよ。」
「それは秘密だよ。」
と得意げなC。
早速、クラブで踊るBのメンバー。
豪華な衣装により、クラブ内で注目の的であり、たちまち大人気となった。
そのなかでも、一番目立っていたのが、C。
あまりにも豪華な衣装で、逆に新しいと、女子にモテまくっていた。
その中でも、一際カワイイD子をゲットしたC。
アレよアレよと言う間に、お持ち帰りをしてしまった。
翌朝、
Cが、D子をゲットしたと言う噂を聞いたBのメンバーは邪魔をしてやろうと、
ひっきりなしに、Cに電話をかけた。
たまりかねたCは、D子を置いて帰ろうとしたところ、
D子は、
「今朝(けさ)は、帰しませんよ。」と。
それを聞いたCは、思い出し
「袈裟を返さないと、住職に怒られる。」と。