まずは、住民監査請求
執行機関(市長など)や職員が、「違法、不当な財務会計上の行為(公金の支出、契約の締結、怠る事実など)」により、自治体に損害を及ぼしていると認める場合、
住民は、それをやめさせ、被った損害を回復させるために、監査委員に監査を求めることができる。
怠る事実とは?
違法、不当に公金の支出、契約の締結をした、というのはなんとなく想像がつくが、
怠る事実って、何? 何を怠ったの?
これは、公金の賦課、徴収、財産の管理を怠ったというものです。
有名なのが、自販機が自治体の管理する道に、はみ出していたのに、占用料相当額を損害賠償として、業者に請求しなかった事件
判例は、長は、客観的に存在する債権を理由もなく放置免除することは、違法な怠る事実となるとした。
ただ、債権金額が少額で、取立てに要する費用に満たない時で、これを履行させることが著しく困難、不適当であるときは、徴収しないとしている。
いつまでに請求すれば?
住民監査請求は、財務会計行為があった日、または、終わった日から原則1年以内に行う必要がある。
いつまでも住民監査請求の対象とすることは、法的安定性の観点から、好ましくないからです。
ただ、財務会計行為が、こっそりなされ、1年隠し通せれば、オールOKでは、ダメなので、「相当な理由」があれば、1年間の期間制限はかからない。
怠る事実については、
違法な不作為状態が続いている限りは請求は可能である。1年の期間制限はない。
ただし、「不真正怠る事実」については、この限りでない。
不真正怠る事実?
ある職員が、不正に公金を支出した場合、
自治体は、職員に対して、1年が経過するまで、損害賠償請求ができる。
これは、住民訴訟で言えば、4号請求(4号請求については、後で)
他方、これは、見方を変えれば、自治体が、職員に対して、損害賠償請求を怠っているとも言える。
このような見方をすると、いつまででも、請求が可能となってしまうので、
このような場合は、住民監査請求に1年の期間制限を設けた趣旨から、
請求を1年に限るものである。
これが、不真正怠る事実
監査委員の対応は?
住民監査請求がなされると、監査委員は、60日以内に監査を行い、
●請求に理由がなとき
書面でその旨を請求人に通知し、公表を行う。
●請求に理由があるとき
議会、執行機関、職員に、必要な措置を取る旨を勧告
その内容を請求人に通知し、公表を行う。
この後、住民訴訟
住民訴訟の要件は?
1 監査委員による監査の結果、請求に理由がないと判断されたとき
2 請求に理由があるとして、監査委員から勧告が出されたが、不十分な内容であったとき
3 勧告は十分だが、執行機関が適切に対応していないとき
いずれかの場合に、住民訴訟が提起できる。
なので、住民訴訟は、住民監査請求が前提となるので、
住民監査請求をしてない者は、住民訴訟を提起することができない。
違法のみ判断、違法とは?
住民監査請求と異なり、
行政活動の違法性のみが審理の対象となる。
裁判所は、あくまで法を解釈、適用する機関であって、政策的な妥当性はの判断は権限外なので、不当な行為については、審査外である。
ちなみに、
違法とは、その行為が法律に違反すること
不当とは、法律に違反はしていないが、その行為が政策的にみて妥当ではないこと。
住民訴訟の種類は?
そもそもは、住民監査請求と同様に、「財務会計上の行為」が対象
1号 財務会計上の行為の差止め請求
例 公金支出の差止め など
2号 行政処分の取消し、無効確認請求
例 行政財産の目的外使用許可の取消し など
3号 怠る事実の違法確認請求
例 自販機がはみ出しているのに、占用料を取っていなかったなどの違法確認 など
4号 当該職員、相手方に対して損害賠償請求、不当利得返還請求をすることを求める請求
4号請求について
「当該職員」とは
違法な行為によって自治体に損害を与えている者
「相手方」とは
違法な行為や怠る事実によって利得を得ている者
4号請求の典型は、住民が、市長に対して、
「違法な行為によって損害賠償責任を負うものに対し、その賠償金を自治体に支払うように請求すること」を求める請求である。
流れについて
当該職員が市長のパターン
この場合、当該職員が長であるので、訴えの提起をするものの代表者と訴えられる者がかぶってしまうので、
この場合の代表者は、代表監査委員となる。
当該職員が一般職員などのパターン